第5回 歌詞もネウマ的に歌おう



「ネウマ的に歌うための発声エッセンス」も最終回となりました。

5回に渡ってお付き合いいただきました発声に関する記事も、今回の記事をもちまして、終了となります。

最後の記事のタイトルは「歌詞もネウマ的に歌おう〜しなやかな声で歌を歌うことについて」です。


歌詞もネウマ的に歌うために、こちらの動画がわかりやすいかな、と思うので貼っておきます。



Salicus Kammerchor第二回演奏会の前に投稿された動画で、バッハのFürchte dich nichtのテキストを例に、ネウマ的歌唱とはどういうものかを解説しています。


動画でも言っている通り、歌は、ざっくりと分けると


シラビックに歌詞を喋る部分

メロディックにメリスマを歌っていく部分


の二つに分かれると思います。


これらを「ネウマ的に」歌うためにどういうことがポイントになるかを解説していきます。



・シラビックに歌詞を喋る部分 (https://youtu.be/kSDL5WoSil8?t=2m6s)

8分音符や4分音符などで、歌詞1音節につき1つの音符が割り振られているような部分です。

動画で解説しているような箇所もそうですし、コラールなど、テンポの遅いものでも1音節につき1つの音符ならばシラビックと言えると思います。


シラビックな部分のネウマ的歌唱については、言い換えれば「喋るように歌う」とも言えると思います。


文章を自然に読んだ時(というより、話した時?)に、語尾から次の言葉へと繋がっていくためへの流れというものがあります。

語尾や助詞が自然に収まった後に、次のアクセントに向けて膨らんでいくような流れです。

言葉のアクセントの後に、そういう膨らみがない場合、アクセントだけが不自然に強調されたような読み方だったり、ロボットのように抑揚のない読み方になると思います。

(下の図のような歌い方)



シラビックな部分をネウマ的に歌う場合、語尾から次の言葉のアクセントへ向けて動きを出すことが大切です。 実際に行うことは、下の図のように、語尾や助詞で自然に音量が緩んだ後、次のアクセントへ自然と繋がるクレシェンドをかける、ということです。技術的な説明をするとちょっと安っぽい感じがしますが(笑)



また、この時に、母音によって顎の緩み具合に大差がない、というのも大きなポイントです。

顎の緩み具合が違うということは、共鳴腔全体の大きさが違うということなので、それぞれの母音の響きに統一感が無くなってしまいます。

特にイ・ウの母音で歯を噛み合わせないように気をつけてみてください。


・メロディックにメリスマを歌っていく部分 (https://youtu.be/kSDL5WoSil8?t=3m12s)

こちらは前回のメルマガで解説した「1つの母音でレガートに歌う」ということがまず出来ていなければいけません。


ポイントは軽くタングトリルを行った時の柔らかい声帯の動きの感覚のまま歌うことと、母音の発音の肝となる舌の位置を安定させる、ということでした。


レガートが出来たところで、やっとスタート地点に立つことが出来たと言えるでしょう。

しかし、動画の4:04あたりから解説していますが、ただ単にレガートで歌うだけでは、重く、流れが悪い感じになってしまいます。


流れを良くしていくために、フレーズのどこかで重みや緊張感のある音、逆に軽く抜ける緩んだ感じのある音を設定して歌う必要がありますが、サリクスではそれをネウマをもとにして考えています。

このフレーズでは、動画の中でも説明しているように


このようにネウマを割り当てて歌うことにしました。赤い線が上に書いてある音符は強い緊張感を持つ音です。

ここで1つ気づけることとして「ネウマ的に歌う場合、緊張感の強い音は表拍にはあまり来ない」ということが挙げられます。

表拍に緊張感があると「1、2、3、4」と拍に合わせて頭を振りながら歌っているような、悪く言えば幼稚な感じに聞こえてしまいます。

裏から表に、裏から表に流れていくことがネウマ的にメリスマを歌う際の大きなポイントになります。


ネウマを元にフレーズを歌っていくと、初学者によくありがちなのが、緊張感が緩む音で呼気を緩めてしまい、そこでフレーズが切れてしまうことがあります。

グレゴリオ聖歌を歌う時も、同じように1つ1つのネウマに集中しすぎてしまい、フレーズの全体像が見えなくなってしまうことがよくあります。

前回の記事で説明した、1つのフレーズを1回の肋骨の収縮で歌う、ということを意識すると、フレーズを通して安定した呼気が流れていくので、プツプツと歌声が途切れるということはなくなると思います。

メリスマと言えば、下の楽譜のように演奏されることが多いですよね(ちょっと極端ですが)



このように歌うと、歌詞は聞き取れなくなると僕は思います。

「gerufen」ではなく「geru・u・u・u・u・u・u・u・u・u・u・u・u・u・ufen」というような具合に聞こえるのです。

これは非常に不自然なことだと思うのです。

外国語は私たちは普段話さないので違和感が少ないかもしれませんが、日本語の言葉に置き換えるとわかりやすいかもしれません。


シラビックに歌う場合も、メロディックに歌う場合も「ネウマ的に歌う」ということは、言葉としての自然な流れを追求した一つの結果ではないかな、と最近は思います。


Salicus Kammerchorのコンセプトの一つに「これまでの器楽的・鍵盤音楽的なアプローチではなく声楽的観点からバッハの音楽を捉えなおす」というものがありますが、現代の日本のクラシック音楽界・声楽界から、ある意味失われてしまったと言っても過言ではない、「言葉が本来持っている自然でしなやかな流れ」を取り戻す。

Salicusの活動はそのようなルネサンス運動ではないだろうか、と思います。


今回で「ネウマ的に歌うための発声エッセンス」はお終いになります。

一人でも多くの方が、しなやかで自然な歌について興味をお持ちいただけたならば、嬉しく思います。

僕自身、もっともっと声を磨き、知識を身につけて、よりわかりやすい解説を書けるようになっていきますので、またの機会に再びお会いできればと思います。


5月にはSalicusの今までの活動の集大成として、バッハのモテット全曲演奏会が開かれます。

そこで「ネウマ的に歌うための発声エッセンス」で書いてきたようなものを十分に感じられると思いますので、ぜひお越し下さい。

バックナンバー

第1回 「声の硬さを取ろう」〜タングトリル〜

https://goo.gl/mZa3ua

第2回 「息の流れをよくしよう」〜呼吸について〜

https://goo.gl/BmfwBs

第3回 母音の響きをよくしよう〜共鳴について〜

https://goo.gl/fizQND


第4回 1つの母音で歌えるようになろう〜レガートについて〜

https://goo.gl/gxba4p

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【演奏会情報】



次回の演奏会は、

第5回定期演奏会 ​J. S. バッハのモテット全曲演奏会

です。

詳細はコチラ↓

http://www.salicuskammerchor.com/concert

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【CD発売中】


Ensemble Salicusのレクチャーコンサートを収録したライブCDをウェブ販売しております!

http://www.salicuskammerchor.com/goods

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【サリクスロンT発売中!】


ラン式のネウマとサリクスのロゴをあしらったロンTです。

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【最新動画公開中!】

Ensemble Salicus演奏会より

アレクサンダー・アグリコラ 第2旋法のミサ より 「クレド」


他の動画はコチラ↓

http://www.salicuskammerchor.com/videos

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【主宰の櫻井元希のウェブサイトはコチラ↓】

http://genkisakurai.com/

#ネウマ #富本泰成 #発声

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