第4回 1つの母音で歌えるようになろう〜レガートについて〜



 「ネウマ的に歌うための発声エッセンス」第4回です。

 今回のタイトルは「1つの母音で歌えるようになろう~レガートについて~」です。

 第1回から申し上げておりますが、ネウマ的に歌うということは複数の音をグルーピングしていくということであり、複数の音をグルーピングするためにはまずはレガートに歌えなければ話になりません。

 声楽では、1つの音節で長いフレーズを「あ~」とか「え~」とか歌うようなことがありまして、それをメリスマとかアジリタとか呼んでいます。

 特に古い音楽ではこのメリスマがたくさん出てきますが、これをできるだけ滑らかに歌おう、というのがサリクスの一つの特徴と思っています。

 バロック音楽の演奏団体で特に多くみられるのは、メリスマを器楽的?に1つ1つ細かく歌うようなアプローチですが、サリクスでは、バロックよりも古い時代の音楽であるグレゴリオ聖歌の演奏法(古ネウマをもとにした歌い方)からバッハの音楽に働きかけていくため、1つ1つの音をマシンガンのように演奏するということはありえないことです。

 メリスマをレガートに歌うということに対して、リハーサルの中でもかなりこだわっています。

 今回は1つの母音でフレーズを歌う、つまり、この「メリスマ」についての記事になります。

 今までご紹介した「タングトリル」「呼吸」「共鳴(発音)」が全て登場する上に、その他の新しい情報が登場する盛りだくさんな回になりますので、心してお読みください。

・レガートを作るためには…

レガートを作るために重要になってくるのは

安定した声帯振動

安定した共鳴腔

の2つです。

これら二つの要素について説明します。

①安定した声帯振動をつくる

まずは音源である声帯が滑らかに振動することが、レガートへの必須条件その1になります。

タングトリルで、歌いたいフレーズを練習してみてください。

良いタングトリルは、音域が変わっても

・音量

・音質

・息の量

・口の中の空間

が変わりません。

と第1回の記事で書きましたが、これらをきちんと守れているかがポイントになります。

また、呼吸の動きも重要になってきます。


声帯はそもそも「ベルヌーイの定理」という仕組みで振動しています。

とてもざっくりと説明すると「二つの物体の隙間に空気を送ると接近する」というような定理らしいです。

実験してみましょう。

ティッシュペーパーを1枚取ってください。

ティッシュは2枚1組で組み合わさっているはずですので、それを2枚に分解していただき、左右の手に1枚ずつ持ってください。

ティッシュを持った両手を口の前に持ってきて、息をティッシュの間に吹きかけてみてください。

両手のティッシュが近づいて、振動したと思います。

声帯もこれと同じ仕組みで振動しています。

安定した振動を起こすためには、同じスピードで息が流れてさえすればいいわけです。

同じスピードで息が流れるということは、均一なペースで体がしぼんでいくということです。

無理に広がりをキープしたり、腹筋を勢いよく収縮させて息を速いスピードで吐いたりしないように気をつけましょう。

以上のことに気をつけてタングトリルを行えば、声帯振動に関してはクリアできたと言っていいと思います。

②安定した共鳴腔を作る

安定した声帯振動が出来たら、その音が良い共鳴腔を通って出て行く必要があります。

良い共鳴腔のためには口腔内で舌がどういう位置取りをしているのかが大切と、第3回の記事にて説明しました。


この時に、音域が変わっても舌の位置取りが変わらないようにしなければレガートになりえません。

それはなぜか?

母音というものが何か、ということを考えると理由がわかります。

・母音とフォルマント

人間の声がどのような仕組みのものなのか、以下に簡単に説明しました。

声帯の原音と、共鳴腔での伝わり方の違い、それが組み合わさって色々な母音を生んでいる、というような感じです。

母音によって強調される周波数が異なるのですが、それぞれ際立って強調される周波数のことを第1・第2フォルマント周波数と呼びます。

フォルマント周波数の高さは母音によって違います。それがそれぞれの母音の発音を特徴づけているのです。

つまり、母音の響きの違いというのは、フォルマントによって強調される倍音の違いと言い換えられます。

僕たちが母音だと思っているものは、倍音なんですね。


少し掘り下げて、それぞれの母音の第1・第2フォルマントの波形を表した図をみてみましょう。

いえあおう、全ての母音で波形が違うのがわかりますね。

先ほど書いたように「母音=共鳴で強調されている倍音」と考えて良いと思います。

母音がわずかでも変化すると、強調される倍音が変わる、つまり音声の波形が変わります。

音声の波形が変わるということは、別の聞こえ方をする音に変化するということなので、前の音とは違う種類の音に変わってしまいます。

そうすると、どうしてもレガートにはなりません。

2種類の違う音をただ並べただけになってしまうからです。


なので、レガートに歌う際には自身の発音、また口の中の舌の位置取りに細心の注意を払う必要があります。

まとめると…

①タングトリルで良い声帯振動を作る

・音量、音質、息の量が変わらないように気をつける

・呼気の際の肋骨の動きが停止しないように意識する

②良い共鳴腔を通す

・舌の位置取りを正確に行い、歌唱中にその位置から舌を動かさない

・タングトリルの時と同じ感覚で歌うことを意識する

という感じです。

呼吸の動きが悪くなっている時は必ず喉周りに不必要な負荷がかかっていて、そうするとレガートに歌うのが大変難しくなるので、肋骨の動きに常に気を配ることが大切なポイントだと思います。

みなさまも、素敵なレガートライフをお送りくださいね!

(富本康成)

バックナンバー

第1回 「声の硬さを取ろう」〜タングトリル〜

https://goo.gl/mZa3ua

第2回 「息の流れをよくしよう」〜呼吸について〜

https://goo.gl/BmfwBs

第3回 母音の響きをよくしよう〜共鳴について〜

https://goo.gl/fizQND

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次回の演奏会は、

11月30日(金)19:00開演

Ensemble Salicus演奏会​

アレクサンダー・アグリコラのミサ曲

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