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第17回 J. S. バッハのモテット(その3)

  • 2016年3月17日
  • 読了時間: 5分

J. S. バッハのモテット

 今回は、来年2017年5月のプログラムについてお話しさせていただきます。J. S. バッハのモテット全曲演奏シリーズの第3回演奏会です。

第3回 (演奏会タイトル未定)(2017年5月) “Lobet den Herrn, allen Heiden” BWV230 “Der Geist hilft unser Schwacheit auf” BWV226を中心としたプログラム

 まだこの演奏会のタイトルは未定ですが、第2回定期演奏会と同様2曲のモテットを演奏予定です。

“Lobet den Herrn” BWV230

“Lobet den Herrn”は19世紀の出版譜で伝えられており、オリジナル資料は欠けています。様式的な根拠からも偽作の疑いがかけられていますが、まだ真偽のほどは明らかになっていません。ベーレンライターのバッハ新全集(Neue Bach Ausgabe)に収録されているということもあり、Salicus Kammerchorサリクス・カンマーコアでは、この作品もバッハの作品と捉えて演奏いたします。

 このモテットは、4声の歌と独立した通奏低音という、バッハの他のモテットにはない編成を持っています。他のモテットは5声(Jesu, meine Freude)や二重合唱ですので、"Lobet den Herrn"は最も編成の小さなモテットということが出来ます。

 ファンファーレ風のテーマ"Lobet den Herrn"「主を賛美せよ」で始まり、メリスマが鮮やかな"und preiset ihn"「彼を賞賛せよ」のテーマの提示を経て、この2つのテーマが組合わせられます。

(Lobet den Herrnのテーマ)

(und preiset ihnのテーマ)

 ホモフォニックで穏やかな"Denn seine Gnade und Wahrheit"「彼の恵みと真実のゆえに」のあと、3拍子に変わり、"Alleluja"「アレルヤ」のフガート(小規模なフーガ)で締めくくります。

 短く編成も小さいものの、他のモテット同様非常に変化に富んだ作品です。

 このモテットは昨年2015年5月に演奏いたしました"Singet dem Herrn ein neues Lied" BWV225同様詩編をテキストとしており、同じテキストの作品は古今に山ほどあります。前半はこの詩篇117をテキストとする作品を取り上げ、時系列に従って演奏して参ります。

 “Lobet den Herrn, alle Heiden”はラテン語では"Laudate Dominum omnes gentes"といい、グレゴリオ聖歌には復活徹夜祭のための詠唱があります。

 まだ選曲検討中ですが、このテキストのグレゴリオ聖歌から演奏会を始める予定です。そして同名モテットを数曲、ドイツ語の"Lobet den Herrn"のモテットを数曲演奏したのち、バッハのモテットを演奏して前半終了となるかと思います。

“Der Geist hilft” BWV226

 後半のメインプログラムは“Der Geist hilft” BWV226です。このモテットは2部構成の作品で、第1部は二重合唱、第2部は4声体の単純なコラール(カンツィオナル様式といいます)です。

 このモテットは、2つの点において、バッハの他のモテットとは異なった特徴を持っています。まず一つは、バッハのモテットの中で、成立年代、演奏機会がはっきりしている唯一のモテットであるという事です。この作品は1729年10月20日、トーマス学校長エルネスティの埋葬のために作曲されました。

 そしてもう一つは、声楽声部に加えて、それを重複する器楽パート譜が伝承されているという事です。

(BWV226の第1合唱ソプラノパート譜 "Canto Chori primi"という声部名が書き込まれています)

(同じくヴァイオリン1のパート譜 "Violino 1. del Corl 1")

 第1合唱には弦楽器、第2合唱には木管が重複され、響きの対比が強調されていることも特筆に値します。器楽のパート譜が遺されているのはこのモテットだけですが、他のモテットも、パート譜が遺されていないだけで、実際の演奏には器楽が重複していた可能性は否定できません。

 そしてこの残された器楽パート譜には、第2部のコラールは含まれていません。このことから、第2部のコラールは墓地で、合唱のみによって演奏されたと考えられています。

 二重合唱で作曲された第1部は、さらに歌詞の行に対応して3つのセクションに分けられます。調性と拍子はそれぞれB-Dur → f-Moll → B-Dur、3/8 → 4/4 → 2/2(alla breve)と変化し、各セクションが鮮やかに対比されています。

第1セクションでは聖霊"Geist"という語が16分音符の華やかなメリスマで表現され、聖霊の羽ばたきを表しています。軽快な3/8という拍子もまた"Geist"の軽やかさを強調するようです。

第2セクションではシンコペーション(弱拍にアクセントをもつリズム)が強調され、バッハには珍しく楔形のアクセントが多用されています。

第3セクションはalla breveと表記され、古様式の非常に重厚な4声のフーガとなります。フーガでモテットを締めくくるのはバッハの常套句ですね。先ほどご紹介した"Lobet den Herrn"でもそうでしたし、"Fürchte dich nicht"や"Singet dem Herrn"もフーガで締めくくられています。

第2部はコラールですが、このコラールはマルティン・ルターのコラール「来たれ、聖霊、主なる神よKomm, heiliger Geist, Herr Gott」で、グレゴリオ聖歌"Veni, Sancte Spiritus"を元としているといわれてます。

コラール"Komm, Heiliger Geist" (Eyn Enchiridion 1524)

グレゴリオ聖歌 "Veni Sancte Spiritus"

 そこでまずは、後半の前半として、このグレゴリオ聖歌、そしてそれをもとにしたモテットを演奏する予定です。候補としては、H. イザーク、L. ゼンフル、H. L. ハスラー、G. P. da パレストリーナの作品などが挙げられます。最近は便利な時代で、こういう検索サイトがあって本当に助かってます(笑)。

 これら"Veni Sancte Spiritus"のモテットを演奏後、コラール"Komm, Heiliger Geist"を演奏し、最後にバッハのモテット"Der Geist hilft"を演奏するという流れで、演奏会を構想中です。

 以上2017年5月の第3回定期公演のプログラムでした。どうぞお楽しみに!

次回予告

 次回は2017年10月を予定しております、第4回定期演奏会で演奏します、"Jesu, meine Freude"BWV227についてお話しいたします。

【次の記事】

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【次回公演】

Salicus Kammerchorの次回公演は『第3回定期演奏会』です。

4月22日(土)14:00開演

横浜市栄区民文化センター リリスホール

4月27日(木)19:15開演

台東区生涯活動センター ミレニアムホール

曲目

”Lobe, den Herrn alle Heiden” BWV 230

”Der Geist hilft unser Schwachheit auf” BWV 226

詳細はコチラ↓

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【最新動画配信!】

第2回定期演奏会より、Heinrich Schütz “Musikalische Exequien” op. 7 III. Canticum Simeonisを公開中です!

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