top of page

Ensemble Salicusメンバーの声


Ensemble Salicus

Salicus Kammerchorから生まれた声楽アンサンブル。グレゴリオ聖歌を主なレパートリーとする。10世紀頃に書かれた「古ネウマ」を手がかりに、グレゴリオ聖歌の歌唱法を模索している。特に特殊ネウマ(装飾ネウマ)と呼ばれる、クィリスマ、オリスクス関連ネウマ、トリゴン、アポストロファの演奏法については、微分音にも着目し、グレゴリオ聖歌における装飾的な演奏法を追求している。

 

 今回のブログは、10月18日に本番を迎えます、Ensemble Salicusのメンバーからの、演奏会に向けての意気込みを紹介いたします。

 

櫻井元希

 Ensemble SalicusはSalicus Kammerchorから生まれた声楽アンサンブルです。

Salicus Kammerchorはグレゴリオ聖歌の歌唱法をその後の音楽にも活かし、特にJ. S. バッハの声楽曲の演奏をこの観点から見直そうというコンセプトを持っています。

 特に10世紀頃に記されたグレゴリオ聖歌の記譜法「古ネウマ」を手がかりにして、演奏法を模索していますが、このグレゴリオ聖歌により特化した団体としてEnsemble Salicusは生まれました。グレゴリオ聖歌そのものを更に研究し、演奏のあり方を考え、豊かな表現方法を探っていくという思いを持っています。

 私たちEnsemble Salicusは「清らかで美しいけれど、単調で退屈」というイメージを持たれがちなグレゴリオ聖歌が、実際はいかに豊かで、劇的で、真に心揺さぶる音楽であるかということを社会に対して発信していきたいと考えています。

 そのために私たちが特に注目しているのが「特殊ネウマ」と呼ばれる「古ネウマ」の一種です。これは、「なんらかの装飾的な歌い方」が用いられていたのではないかと考えられているネウマです。いまだ研究途上で、どのような装飾が行われていたのかははっきりとは分かっていません。そのため古ネウマを元にグレゴリオ聖歌を演奏している団体であっても、この特殊ネウマの歌い方は一様ではなく、様々な解釈での演奏が行われています。私たちは様々な文献、今までの演奏実践例から学びながらも、ある特定のネウマでは私たち独自の歌い方も採用しています。

 その意味で我々の演奏は世界のどこでも聞く事の出来ないものです。試行錯誤を繰り返しながらより音楽的であり、歴史的にも妥当性のある演奏を目指しています。この試みによって、今まで誰も聴いたことのない、グレゴリオ聖歌の真髄に迫っていきます。

 また日本ではメインプログラムとして演奏されることのないグレゴリオ聖歌をメインに据え、それそのものの魅力を発信していくことで、日本の音楽文化の発展にも資するものとなると考えています。

 グレゴリオ聖歌が、上記のような「単調で退屈」というイメージを持たれている状況のまま、単にグレゴリオ聖歌を演奏しただけでは、その面白さ、魅力を充分に伝えることが出来ないかもしれません。そのため私たちは当面、レクチャーを交えながらの演奏を主体とした活動をしていきたいと考えています。

 また私たちにとってより身近な音楽である「フランドル・ポリフォニー」を同じプログラム内で演奏いたします。このことによって、単声音楽と多声音楽との音響的差異とともに、精神的な共通性を感じていただけると思われます。

 この2つの工夫によって、グレゴリオ聖歌の魅力をよりわかりやすく伝えていけるものと考えています。

櫻井元希

 広島大学教育学部第四類音楽文化系コース、東京藝術大学音楽学部声楽科を卒業。同大学院古楽科バロック声楽で修了。声楽を枝川一也、寺谷千枝子、櫻田亮に、バロック声楽を野々下由香里に、合唱指揮をアレクサンダー・ナジに、指揮を今村能に、古楽演奏を花井哲郎に師事。  Salicus Kammerchor主宰。フォンス・フローリス古楽院講師。東京藝術大学バッハカンタータクラブ2013-2015年度演奏委員長。ヴォーカル・アンサンブルアラミレ、リーダー。男声アンサンブル 八咫烏、The Cygnus Vocal Octet、ジャパンチェンバークワイア、ヴォーカル・アンサンブル カペラ、古楽アンサンブル コントラポント等に所属。

 

佐藤拓

 アンサンブル・サリクスのリハーサルはなかなかに独創的です。古ネウマに隠された旋律、歌唱法の原型を、かすかな手掛かりですら藁のようにすがって、アレやコレやと試し打ちしつつ復元を目指しているわけですが、これは考古学的ではありつつも、もはやアクティブな創造行為に近いような気がいたします。ネウマはさながら恐竜の一片の骨のようなもので、その組み合わせから全体の姿や大きさ、体に毛が生えていたのかいなかったのか、飛べたのか飛べなかったのか、足の速度はどんなもんか・・・などを仮定・想像しながら恐竜のイメージ図を書き上げていく、そんな現在進行形の面白さがあります。ティラノサウルスの想像図もここ数年で随分と変遷を重ねていますが、あんな感じで私達の歌もどんどん変わっていくに違いありません。  というわけで、昨年YouTubeにアップした動画とほぼ同じ聖歌を演奏するのですが、その歌い方は確かに変わっています。生で聞くとまた更に独特な音響を肌で感じていただけると思います。ぜひとも会場で、アンサンブル・サリクスのサウンドをお楽しみください。

佐藤拓

 早稲田大学第一文学部卒業。在学中はグリークラブ学生指揮者を務める。卒業後イタリア・パドヴァに渡りMaria G.Munari女史のもとで声楽を学ぶ。  World Youth Choir元日本代表。Japan Chamber Choir、Salicus Kammerchor、Vocal Consort Initium等のメンバー。東京稲門グリークラブ、日本ラトビア音楽協会合唱団「ガイスマ」指揮者。特殊発声による合唱グループ「アガリアム合唱団」アンサンブルトレーナー。  The Cygnus Vocal Octet、Vocal Ensemble歌譜喜、男声アンサンブル八咫烏のメンバーとして1パート1声のアンサンブルを追求している。声楽を捻金正雄、大島博、森一夫、古楽を花井哲郎の各氏に師事。

 

谷本喜基