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第15回 J. S. バッハのモテット(その1)

J. S. バッハのモテット

第15回 J. S. バッハのモテット(その1)(この記事)

第16回 J. S. バッハのモテット(その2)

第17回 J. S. バッハのモテット(その3)

第18回 J. S. バッハのモテット(その4)

 

昨年2015年5月に立ち上げたサリクスカンマーコアですが、当面

J. S. バッハ「モテット」全曲演奏シリーズ

と題しまして、バッハのモテットをテーマに演奏会を企画しております。

そこで今回は、J. S. バッハのモテットについてお話しさせて頂きたいと思います。

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J. S. バッハのモテット  モテットというジャンルは、13世紀以来様々な種類の楽曲に対して用いられましたが、バッハの過ごしたころには「宗教的な歌詞を持つ声楽曲」という漠然とした意味で用いられていました。

 合唱曲に限らず、歌のソロと器楽の編成による楽曲にもモテットという語があてられましたが、そのような用例はバッハの場合は1曲のみ、ペルゴレーシの《スターバト・マーテル》を編曲したBWV1083(ソプラノとアルトの独唱、弦、通奏低音)のジャンル名として用いられています。これは元の楽曲のジャンル表記に倣った例外的な語法で、バッハにとってモテットという語は、主に合唱と通奏低音による宗教声楽作品(器楽が独立したパートを担わない)に対して用いられました。

 モテットはバッハの生きた1700年頃には既に流行の頂点を過ぎたジャンルで、この頃の教会音楽の主流はもっぱらカンタータでした。バッハもその例にもれず、カンタータは200曲ほど現存しているのに対し、モテットはどんなに多く見積もっても(偽作等が含まれるため)9曲しか残されていません

1) "Singet dem Herrn ein neues Lied" BWV 225

2) "Der Geist hilft unser Schwachheit auf" BWV 226

3) "Jesu, meine Freude" BWV 227

4) "Fürchte dich nicht, ich bin bei dir" BWV 228

5) "Komm, Jesu, komm" BWV 229

6) "Lobet den Herrn, alle Heiden" BWV 230

7) "Ich lasse dich nicht, du segnest mich denn" BWV Anh. 159

8) "Jauchzet dem Herrn, alle Welt" BWV Anh. 160

9) "Der Gerechte kommt um" BWV 無し

 前半の5曲はバッハの真作であることが明らかになっていますが、後半の4曲は信憑性に疑いがもたれています。

6)は19世紀の出版譜でのみ伝えられる作品で、「バッハのオリジナル手稿譜による」と銘打たれています。

7)はバッハの父の従兄、ヨーハン・クリストフの作と伝えられている作品。

8)はテーレマンとバッハの作品を寄せ集めたモテットで、その第2曲がバッハのBWV28-2の編曲であるが、バッハの手による編曲ではないとされています。

9)はバッハのトーマスカントルの前任者であるヨーハン・クーナウのラテン語モテットの編曲で、バッハの手によるとする研究者もいます。

サリクス・カンマーコアではこのうち1)から6)までをバッハのモテットとして捉え、これら全曲を4回の演奏会に分けて演奏いたします。

 なぜ6曲なのに4回の演奏会で演奏するかというと、1)と3)は曲の規模がかなり大きいのに対して他の4曲は比較的小規模であるためです。これらの4曲は2曲ずつ取り上げることとしました。

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第1回定期演奏会『Singet dem Herrn ein (altes und) neues Lied!』(終了2015年5月) “Singet dem Herrn ein neues Lied” BWV225を中心としたプログラム (詳細はコチラ

 こちらは昨年2015年に終了した、サリクス・カンマーコアのデビューコンサートです。"Singet dem Herrn ein neues Lied"に用いられている3つのテキスト(中間部の作者不詳のアリアを除く)と同じテキストを持つグレゴリオ聖歌、ラテン語とドイツ語のモテットを集めて演奏いたしました。

この作品のテキストが、サリクスの掲げるコンセプトにも合致しているように感じましたので、演奏会テーマはこの作品のタイトルをもじって、Singet dem Herrn ein (altes und) neues Lied!「主に向かいて(古いがしかし)新しき歌を歌え」としました。

(この演奏会での録音はコチラ

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