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第18回 J. S. バッハのモテット(その4)

J. S. バッハのモテット

第15回 J. S. バッハのモテット(その1)

第16回 J. S. バッハのモテット(その2)

第17回 J. S. バッハのモテット(その3)

第18回 J. S. バッハのモテット(その4)(この記事)

 

第4回定期演奏会(演奏会タイトル未定)(2017年10月) “Jesu, meine Freude” BWV227を中心としたプログラム

 ようやく最終回です。モテットシリーズの最後に演奏しますのは、大曲、"Jesu, mein Freude"です。

 このモテットは、5声と編成としては小編成ながら、演奏時間はバッハのモテットの中では最長の約20分かかる大作です。対をなす大作"Singet"でも演奏時間は約14分ですので、いかに"Jesu, meine Freuude"が規格外の規模を持っているかが分かります。

 この2曲の大作モテットを評して音楽学者マルティン・ゲックは、

「《主に向かいて新しき歌をうたえ》の完璧な「形式Form」が作曲家のためのものだとすれば、《イエスよ、わが喜び》の完璧な「構造Architektur」は、神学者のためのものといえよう」

と評しています。

テキストは、J. フランクの同名コラール全節を軸に、各コラールの間にローマ人への手紙第8章から第1、2、9、10、11節が挿入されています。このテキストの配置に対しバッハは、以下のような完璧なシンメトリーの『構造』をもって作曲しました。

 第1曲と第11曲は音楽的には同一です。第10曲は第2曲の縮小形にカデンツァを付加したものと言えます。中心となる第6曲の大規模なフーガの両脇には、3曲セットでカンツィオナル形式のコラール・3声のポリフォニー・コラール変奏が置かれています。

 このようなシンメトリー構造をバッハは度々彼の作品で用いています。例えばロ短調ミサのクレド、ヨハネ受難曲の第2部、カンタータ第4番「キリストは死の縄目につながれたり」を思い起こせば、彼がいかにこの構造に特別な意味をこめていたかが分かります。

 そしてこのシンメトリー構造の中心は、5声のフーガとなっています。他のモテットでも終結部でフーガが用いられていることに、前回のブログで触れましたが、このモテットでも核心部分においてフーガが用いられています

 コラールと聖句を交互に、まるで対話するように配置したこの作品を、A. シュヴァイツァーは「生と死についてのバッハの説教」と表現しました。おそらく追悼式に作曲したと思われるこの作品は、今年2016年5月に行われる第2回定期演奏会と同じく、死をテーマ