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第52回 教会カンタータに綴られた物語2


教会カンタータに流れるおおまかな筋をご紹介するシリーズ2回目です。


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2回目はBWV103のテキストについてです。

 

カンタータ第103番「あなた方は泣き喚くだろう」 BWV 103

Kantate Nr. 103 „Ihr werdet weinen und heulen” BWV 103


J. S. バッハがライプツィヒ着任2年目の1725年に作曲した作品。復活節第3日曜日のために作曲されたもので、この日読まれる福音書章句の内容は、イエスが弟子たちに語った「悲しみが喜びに変わる」というもので、「受難」という悲しみを通して「救い」に預かれるのだということを、出産の苦しみとも対照させながら説いたものです。


このカンタータは6楽章構成です。冒頭合唱では悲しみが喜びに変わるというテーマを提示し、続く2・3楽章(レチタティーヴォとアリア)は悲しみを、4・5楽章(レチタティーヴォとアリア)はそれが喜びに変わる様子を描写します。終曲コラールでは受難に思いを馳せながらも、束の間の苦しみが喜びへと、永遠の幸福へ変わるだろうと締めくくります。


本当にざっくりとした流れは以上なのですが、これだけだとあまりにざっくりなので(笑)、もう少しだけ詳しく見ていきましょう。


冒頭合唱は当日読まれた福音書からそのままイエスの言葉を引用します。中間部ではバスのアリオーゾとなりますが、これはイエスの声(Vox Christi)をあらわしています。


第2曲は悲嘆に暮れるテノールのレチタティーヴォです。愛する人を失った悲しみに打ちひしがれます。第3曲に現れるギレアドの乳香、そして医者の描写は、旧約聖書のエレミア書8章からインスピレーションを受けたもので、イエスの他に救い主はいないと嘆願します。


第4曲のアルトレチタティーヴォでは、再び冒頭のテーマ、「悲しみが喜びに変えられる」が思い起こされます。第2曲では悲嘆に暮れていたテノールですが、第5曲では一転、力強く悲しむ心を励まします。1−4曲で全く奏されることのなかったトランペットが登場し、喜びの勝利を宣言するのです。


終曲コラールは、イエスを一度は見捨ててしまった人間の愚かさ(ペテロの否認)を振り返りつつも、「あなたの束の間の苦しみは喜びと永遠の幸福へと変わるだろう。」と締めくくります。この日のテーマに本当にピッタリなコラールです。



 

BWV103歌詞対訳






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