第31回 第3回定期演奏会の選曲コンセプト(その2)


今回は2017年4月22日・27日開催の

Salicus Kammerchor第3回定期演奏会

J. S. バッハのモテット全曲演奏シリーズvol. 3

〜詩編モテットと葬送モテット〜

について、後半の選曲コンセプトについてお話させていただきます。

前半についてはコチラ

演奏会情報はコチラ

後半

〜葬送モテット〜

 後半のメインプログラムはJ. S. バッハ作曲の"Der Geist hilft unser Schwachheit auf" BWV 226です。このモテットはバッハのモテットの中で唯一成立年と使用用途のはっきりしている作品です。1729年10月20日、トーマス学校長エルネスティの埋葬のために作曲されました。

 後半のプログラムこの使用用途に注目し、葬送モテットと題して、死にまつわる作品を集めました。

 以下が後半プログラムの一覧です。前半より曲数は少ないですが、1曲1曲が割りと長めなので、総演奏時間は前半と同じくらいです。

以下それぞれについて簡単に解説させていただきます。

グレゴリオ聖歌 死者のための聖務日課より応唱「私は信じる、救い主は生きておられると」

​ 死者のための聖務日課で歌われる応唱。前半のグレゴリオ聖歌「諸国よ主をほめ讃えよ」と同じく第8旋法で、装飾的、終結部に向かって順次上行下降を繰り返すのが印象的な聖歌です。

ギョーム・デュファイ(ca.1400-1474)「めでたし天の元后」

​ デュファイはジョスカンの一世代前の大家で、音楽のルネサンス時代を切り開いた作曲家と言われています。「めでたし天の元后」は自身の臨終に際に歌ってもらうために作曲しました。通常の"Ave Regina caelorum"のテキストに「勤勉なるデュファイを憐れみ給え」と自身の名前を付け加えることで、彼の非常に個人的な祈りを表現しています。

ジョスカン・デ・プレ(ca.1450-1521)「われらの父よ/アヴェ・マリア」

 ジョスカンは葬送モテットを数多く作曲しています。オケゲムの死を悼んで作曲した「森のニンフ」(第2回定期演奏会でも演奏しました。動画はこちら)が有名ですが、他にもフェラーラ公エルコレのために書かれた「憐れみ給え」や誰のためかは不明ですが葬儀のために書かれたと思われる作品に「深き淵より」があります。

 「われらの父よ/アヴェ・マリア」は、ジョスカンが誰かのためではなく自分自身の葬儀のために作曲した作品です。前後半ともグレゴリオ聖歌の定旋律をテノール2声がカノンする構造となっています。

ハインリヒ・イザーク(ca.1450-1517)「誰が私の頭に与えるのか」

 今年没後500年を迎えるイザークですが、彼の作品にも葬送モテットがあります。1492年に作曲されたロレンツォ・デ・メディチの死を悼む哀歌「誰が私の頭に与えるのか」です。メディチ家の宮廷詩人アンジェロ・ポリツィアーノの作詞したラテン語のテキストに、4声の実にしっとりとした音楽が付けられています。

 後半ではグレゴリオ聖歌の一節 "平安を与えたまえ" 何度も何度も繰り返され、哀悼の念を表します。

ニコラ・ゴンベール(1495-1560)「偉大なるジュピターの娘ムーザよ」

​ ゴンベールはポストジョスカン世代の作曲家で、ジョスカンとパレストリーナの間の時代のもっとも重要な作曲家です。ジョスカンの通模倣様式をさらに徹底的に突き詰めた作曲家と言われています。ジョスカンの弟子と伝えられるゴンベールには、彼の死を悼むモテットが残されています。

 6声のモテットで、テノール以外の5声部はギリシャ神話を引き合いに出しながらジョスカンをたたえます。テノールは「嘆きの言葉を聞いてください」の定旋律を繰り返しますが、繰り返すたびに1音ずつ上昇していきます。

ハインリヒ・シュッツ(1585-1672)「それは確かに真なる」

 シュッツは同時代の詩人パウル・フレミングに「シュッツよ、君の名が 死者を死から解き放つ」​と言わしめたほど多くの葬送モテットを作曲しています。シュッツについては過去のブログにも書いていますのでぜひご覧ください。(第19回 第20回 第21回

 今回演奏するのは、彼と1歳違いの作曲家で、ザムエル・シャイトとともに3大Sと評せられるヨハン・ヘルマン・シャインの死に際して作曲した作品です。87歳という長寿を全うしたシュッツとは対象的に、シャインは44歳という若さで早逝しました。シュッツは6声のこの作品で、非常に力強く、そして非常に鮮やかに信仰を宣言しています。

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ「御霊は我らの弱きを強め給う」

 プログラム最後の曲は、バッハの8声のモテットです。この作品は成立年がわかっている唯一のモテットと言いましたが、もう一つ、他のモテットにはない特徴を持っています。この作品は、スコア、声楽のパート譜に加え、器楽のパート譜も残されているのです。器楽は声楽パートを補強するのみで、独立したパートではありません。編成は、第1合唱が弦(ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ)、第2合唱が管(オーボエ・ターユ・バスーン)です。カンタータの中でモテット様式の楽章にも、殆どの場合器楽が重複しているので、他のモテットもパート譜が残されていないだけで、実際の演奏には器楽が重複したのではないかと考えられています。

このモテットについてはコチラにも記事を書いていますのでぜひご参照ください。

 2回に渡って、第3回定期演奏会の選曲についてお話しました。歴史の流れを追いながら、実際に演奏を聞いていただくと、バッハの音楽がどのような土壌のもとに成立して、それまでの音楽から何を引き継いだのか、また何が革新的だったかということも体験して頂けることと思います。

(櫻井元希)

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【次回公演】

Salicus Kammerchorの次回公演は来年2018年5月の第4回定期演奏会です。

また関連公演として、Ensemble Salicusのデビューコンサートが10月18日に予定されています。

詳細はコチラ↓

http://www.salicuskammerchor.com/concert

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【最新動画公開中!】

第2回定期演奏会より、Heinrich Schütz “Musikalische Exequien” op. 7 III. Canticum Simeonisを公開中です!

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