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第1回 「声の硬さを取ろう〜タングトリル〜」


 みなさまこんにちは。

 Salicus Kammerchorに所属しているテノール歌手の富本泰成(とみもとやすなり)です。

 5回に渡って、「ネウマ的に歌うために」というテーマに基づいた、発声についての連載をさせていただきます。

 

 世の中には様々な歌唱法がありますが、サリクスが試みている「ネウマ的に歌う」というのはどのような歌い方なのか?ということからまず考えていきましょう。

 このブログ掲載に先立って掲載された、渡辺研一郎さんの「5回で学ぶネウマ講座」でも触れられていますが、古ネウマというのは旋律の「動き」を表現しているもので、単音を表すネウマを除き、基本的には複数の音から成っています。

 左のネウマ(pes)は低い音から高い音へ、右のネウマ(clivis)は高い音から低い音への動きを示している古ネウマです。

 この音の動きを、ピアノに初めて触る子供が、人差し指で音を1つ1つ叩いたように歌うと、2つの音が無関係に並べてあるような音になります。それではこれらの古ネウマが持っている音の繋がりや動きは分断されてしまい、もうpesやclivisとは呼べません。

 「ネウマ的に歌う」とは、2つから3つの音のまとまりを、古ネウマが持っている音の動き(緊張と弛緩の関係)の通りに歌い、それらが滑らかに繋がるように歌うことです。

 サリクスでは「複数の音をGroupingして歌う」と言われています。

 以下の図のように現代の楽譜にネウマをそのまま落とし込むとイメージしやすいと思います。

 一般的にレガート唱法と言われているものと、音の緊張弛緩の動きを除けばとても近いと思いますので、まず今回はレガートに歌うために役立つエクササイズを紹介します!

 

まずは声の源である声帯の硬さを取る。

有効なエクササイズ「タングトリル」

 タングトリルは、合唱や声楽をやっている方なら一度は聞いたことがある言葉ではないでしょうか。いわゆる「巻き舌」です。

 リハーサルの現場を覗いてみても、たくさんの声楽家・歌手がウォームアップとして使っています。巻き舌が出来ない場合は「リップトリル」でも問題ありません。唇をブルブル震わせるやつです。

 声帯というのは扱いが難しいもので、閉鎖が弱すぎたり、声帯に適切な厚みより薄かったりすると息が漏れてスカスカの息漏れ声になります。逆に、声帯が必要以上に分厚く閉鎖が強すぎると声の質はとても硬くなります。

 特に後者の場合は、音の1つ1つに強いアタックがつくので、レガートに歌うことはとても難しくなります。

 これらを解消するためにタングトリルを行うのですが、やり方を間違うとあまり効果がないので、効果的に練習をするためのポイントをお伝えします。

 

タングトリル(リップトリル)を行う際のポイント

①息を均一な速度で流す

 まずは、声帯を振動させるための息が一定の速度で流れていなければいけません。

 無声で息だけでタングトリルをして、舌の振動が安定するようにしましょう。

 息が口の外へスムーズに出ていくように、舌はなるべく前の方に位置しているといいです。

 この時の、喉の中を息が楽に通り抜けていく感覚を覚えておいてください。

②喉で息を止めない

 口をポカーンと開けた状態で「ハッ!」と息を止めることは出来ますか?

 首の周りに「キュッ」と締め付けられるような感覚があり、息が詰まったような状態になるかと思います。

 この時、首の外側の筋肉を使って、声帯は無理やり閉じさせられています。

 こういう体の状態はレガートに歌うためにはひどく不適切です。

 先ほどの無声タングトリルの感覚のままで、息に反応して出てくる音を使いましょう。

 始めもうちは上手く出ない音があっても構いませんし、そもそもあまり大きな音は出ないと思ってください。

 音を出すために、喉周りにキュッと閉まるような感覚が走ること(声帯を外側の筋肉を使って無理やり閉じること)を許してしまうと、レガートからは遠ざかってしまいます。

 「身体が楽」という“過程”を「音」という“結果”よりも優先しましょう。

③舌の位置をあまり下げない

 舌の高さと声帯の働き方には関係があるそうです。

 舌の位置が低く、口蓋との距離が広ければ声帯を縮めて厚くし音を強くするThyroArytenoid(甲状披裂筋)

 舌の位置が高く、口蓋との距離が狭ければ声帯を伸ばして薄くし音を高くするCricoThyroid(輪状甲状筋)

が働きやすくなる傾向がある、と言われています。

 声の硬さを取り、軽くしていきたいので、舌の位置は低くしない方が良いです。

 舌の奥の方が高い位置にある、日本語の「う」の母音をイメージしながらタングトリルを行いましょう。

 

 以上のポイントを意識して行うと、良いタングトリルが出来るかと思います。

良いタングトリルは、音域が変わっても

・音量

・音質

・息の量

・口の中の空間

が変わりません。

 この中のどれかが変化したり、崩れていると、どこかに負荷をかけて音を出している可能性があります。

低音から高音まで一本につながったタングトリルが出来れば、ネウマ的に歌うための準備は整ったと言えるでしょう!

 ちなみに、タングトリルやリップトリルなど、声帯以外の場所に圧力がかかるような発声練習を「semi occuluded exercise(半閉鎖的運動)」というそうです。

 声帯以外の場所にかかる圧力により、通常の発声よりも声帯の負荷が軽くなり、より良い振動を起こしやすいそうなので、ウォームアップや発声のフォームの確認にはうってつけのようですね。

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