

Ensemble Salicus第2回演奏会|終演
去る12月19日、Ensemble Salicusの演奏会が終演いたしました。 ご来場くださいました皆様、お寒い中本当にありがとうございました。 ミサ《ロム・アルメ》は40曲以上も作られているだけあって、作曲家たちの実験場、あるいは腕試しの場になっていたようで、非常に挑戦的で難易度の高い作品が多いです。 今回はその中でもとりわけ内容の充実した楽章を各作曲家から集めましたので、まさにメインディッシュ5品盛りの様相を呈しており、非常にやりがいがありました。 アンコールで演奏した作品について、少し説明不足だったように思いますので、この場を借りまして説明させていただきたいと思います。 今回のミサ《ロム・アルメ》の原曲である“L’homme armé”は、(旋律と歌詞が)完全な形ではたった一つの写本にしか残されていません(上図)。それが通称ナポリ写本と呼ばれる写本なのですが、“L’homme armé”が完全に残されているという歴史的重要性もさることながら、そこに収録されたミサ《ロム・アルメ》が非常に興味深い6曲一組のセットになっているのです。 1曲目から


第50回 ミサ《ロム・アルメ》〜種々の作曲家による〜(その2)
12月19日のEnsemble Salicus第2回演奏会のプログラム解説その2です。 今回は後半プログラムを解説します。 その1はこちら→https://00m.in/OcZIP サンクトゥス:ジョスカン・デ・プレ(1450/1455-1521) ミサ《ロム・アルメ》~種々の音高による~ Sanctus : Josquin des Prez Missa “L’homme armé” ジョスカンは言わずと知れた15-16世紀最大の作曲家。ジョスカンは“L’homme armé”の旋律を使ったミサ曲を2曲(「種々の音高による」と「第6旋法」)残していますが、この2曲はともに、1504年に出版された史上2つ目の印刷楽譜である「ジョスカン・デ・プレ ミサ曲集」に含まれています。この曲集にはジョスカンのミサ曲が5曲収められていますが、その最初に収められたのが「種々の音高による」であり、最後に収められたのが「第6旋法」です。この2曲がジョスカンのミサの中でもいかに重要な位置を占めていたかがこのことによってうかがい知れます。 「第6旋法」において“L’hom


第49回 ミサ《ロム・アルメ》〜種々の作曲家による〜(その1)
今回は12月19日のEnsemble Salicusの演奏会に関する記事です。 その1としました今回は、この演奏会の選曲コンセプトと、前半プログラムの解説をいたします。 Ensemble Salicus第2回となるこの度の演奏会では、15世紀から16世紀にかけて大変人気を博した、 “L’homme armé”(武装した人)という歌をもとにしたミサ曲を演奏いたします。 “L’homme armé”の旋律がどのような由来を持った旋律であるかは謎に包まれています。その歌詞全体が書かれたものはナポリの写本に掲載された作者不詳のミサ曲のテノール声部に残されているだけで、旋律も歌詞も、誰がなんのために作ったのかわかっていません。ABAという単純な構造の旋律ながら、音域が広く変化に富んでいる上、印象的な4度、5度の跳躍を持ち、定旋律として魅力的だったのでしょう。“L’homme armé”を定旋律としたミサ曲は15世紀から16世紀にかけて40曲以上も作曲されました。 多くの作曲家がこの同じ旋律に取り組んだことで、いかに他の作曲家のものと違う個性的な作品を作るか